【試訳】神の慈しみのチャプレット
<はじめに>
ポーランドの聖ファウスティナ・コヴァルスカによって始められ、全世界に普及している信心業に「神の慈しみのチャプレット」があります。残念なことに、日本のカトリック信徒には全く浸透していませんが、信心業の中ではロザリオを別格とすれば、神の慈しみのチャプレットはエース級の位置付けとも言えるでしょう。
ある動画を紹介致します。
これはニューヨークのフランシスコ会が制作した「神の慈しみのチャプレット」の動画ですが、2020年3月15日に公開されて、現在では再生回数180万回に迫る勢いです。この信心業の人気の高さを物語っています。
日本の教会当局がこの信心業に言及することは一切ないため、その名称さえも憐れみのチャプレット、御憐みのチャプレット、慈しみの祈りの花束等、いろいろな呼び方が乱立していて全く統一されていません。
ここでは「神の慈しみのチャプレット」と称することに致します。
通常、「神の慈しみのチャプレット」はロザリオを用いて唱えられます。(オプショナルの祈りを入れなければ)5分少々で終わるため、会社の昼休み、通勤中の電車やバスの中、起床時、就寝時などあらゆる状況下で祈ることができます。
困ったことに、代表的な信心業の一つでありながら日本の教会当局が認可した正式な邦訳が存在しないため、我が国では有識信徒の間で個人が翻訳した無数の祈祷文が水面下で広まっているのが現状です。
このたびは弊会のメンバーの一人が翻訳したものを紹介させていただきます。
<祈り方>
こちらの英文サイトがわかりやすいでしょう。
<日本語版>
上記サイトの右上にあるロザリオの絵(下図)には番号が付されています。ロザリオのどの場所でどの祈りを唱えるのかということが一目瞭然です。
以下、この図の番号に沿って日本語の祈りを紹介致します。(「 」内が試訳です。当然ながら、それ以外の部分は文語でも口語でも結構ですので教会公認の正式な祈りをご使用下さい)
1.十字を切る(父と子と聖霊・・・)
2.オプショナルのため省略
3.主の祈り(天にまします・・・)
4.天使祝詞(めでたし・・・)
5.使徒信条(我は天地の創造主、全能の父なる天主を信じ・・・)
※ロザリオでは各玄義には入る前のウォーミングアップで主の祈りが一回、天使祝詞が3回唱えられますが、神の慈しみのチャプレットではそれに代わって天使祝詞用の3つの珠で主の祈り、天使祝詞、使徒信条が一回ずつ唱えられます。(オプショナルの祈りを入れる場合は主の祈りの前に主の祈り用の珠でそれを唱えます)
6.★ロザリオ各連の主の祈りを唱える珠で以下の祈りを唱える。
「とこしえなる御父よ、我等と全世界の罪の贖いのため、我は御身に御身の最愛の御子、我等の主イエズス・キリストの御体と御血、ならびにそのご霊魂と神性を捧げ奉る」
7.★ロザリオで天使祝詞を唱える各連の小さな10個の珠で以下の祈りを唱える.
「主の痛ましきご受難によりて、我等と全世界に慈愛を注ぎ給え」
8.以下、ロザリオで主の祈りを唱える珠で6の祈りを、天使祝詞を唱える珠で7の祈りを繰り返す。
9.結びの祈り
ロザリオが一周して5連が終了した後、以下の祈りを3度唱えて、この信心業は終わる。
「聖なる神、全能にして聖なる御方、朽ちることなき聖なる御方、我等と全世界に慈愛を注ぎ給え」
10.オプショナルのため省略
<最後に>
暗記すべき祈りは6、7、9だけです。これさえ覚えれば、いつでもどこでもロザリオがあれば神の慈しみのチャプレットを唱えることができます。ロザリオの会などでロザリオを終えた後に付け加えてもよいでしょう。
ちなみに、二人以上で祈る時は6と9の祈りは全員で唱え、7の祈りは先唱者が「主の痛ましきご受難によりて」と唱えた後にもう一人(二人の場合)、もしくはその他全員(三人以上の場合)が「我等と全世界に慈愛を注ぎ給え」と唱えればよいでしょう。
諸外国において、神の慈しみのチャプレットには根強い人気があります。
折りしもコロナ禍の世の中になり、コロナを人類の罪に対する天罰として見る人々が今日も世界の至る所でこの祈りを唱えています。
神の慈しみのチャプレットはパワフルな祈りとして知られます。何故ならば、この祈りは自分が罪びとであることを謙虚に認め、罪の自覚を持たない他人の罪まで神のみ前で詫び、キリストのご受難に免じて赦しを乞い、神の恵みを願う祈りであるからです。