グレゴリオ聖歌とは?

2019年8月7日

 本来教会で典礼を行なうための音楽であるが、芸術性が極めて高く、ヨーロッパ音楽の母体といわれるほど音楽史上大きな存在として知られている。また、その唱法、旋律、動律などの楽典においても高度な理論がある。

 ローマ・カトリック教会の正式の典礼聖歌で、歌詞は大部分がラテン語散文が用いられている。その名称は教皇グレゴリウス1世(在位594-604)に由来する。ローマ・カトリック典礼とともに生成発展しつつ現在にいたったいわゆる生きた存在で、20世紀になってから、さらには第二ヴァチカン公会議(1962-1965)の典礼刷新以降に新たに作曲されたものさえ含まれている。

 第二ヴァチカン公会議の典礼憲章は従来ラテン語で行なう事になっていた典礼の各国語への道を開いたが、第36条にラテン語の使用は、ラテン典礼様式において遵守されること、第116条に教会はグレゴリオ聖歌をローマ典礼固有の歌として認め、従ってこれは、典礼行為において、他の点からは差異が無いものとすれば首位を占めるべきものであることを定めている。

 ミサは、常に同じことばを用いる「通常文」と、ミサの種類(典礼暦年、秘跡、特別な意向、信心、死者など)によって変わる「固有文」で構成されるが、グレゴリオ聖歌の規範版によって、そのいずれにもグレゴリオ聖歌の割当てが定められている。

 日本においては、コンサートでグレゴリオ聖歌が歌われたり、CDが発売されたりしているが、これはグレゴリオ聖歌の音楽的な面だけの鑑賞であって、グレゴリオ聖歌の本来の存在価値が発揮されるのは教会の典礼を行なうときに用いられることにある。

(参考文献)

○ 第二ヴァチカン公会議 日本司教団秘書局訳 「典礼憲章」1968年 中央出版社
○ 野村良雄 序 (水嶋良雄著 「グレゴリオ聖歌」1966年 音楽之友社)
○ 「世界大百科事典」平凡社