アマゾン特別シノドスについて

2021年11月4日

 現在、バチカンにて「アマゾン周辺地域のための特別シノドス」が開催されています。このシノドスに多数の神学者、高位聖職者が多くの懸案事項を指摘しています。

 南米のアマゾン河流域には無数の問題が山積しています。環境汚染問題を筆頭に人身取引、暴力、犯罪の多発、児童労働、若者の都市移住に伴う地域の過疎化など多分野にわたって解決困難な問題が長年にわたって存在します。

 法的にも未整備な状況にあるこれらの問題に対して、教会が取り組むべき問題を包括的に討議するのがこのシノドスの目的です。

 他にも司祭不足の状況に如何に対応すべきかという切実な問題もあり、女性司祭、妻帯司祭の可否も審議される模様です。同時に典礼のインカルチュレーション(地域の文化に合わせた変更)も不可避なものとして議題にのぼることになります。

 インカルチュレーションには慎重と熟慮が求められます。安易に妥協すれば、信仰上のマイナス要素がプラス要素を上回ってしまう結果を招きかねません。

 我が国においても聖座の許可のもとに数々のインカルチュレーションが行われてきましたが、残念ながら信徒数に大きな変化は見られず、困ったことに教会内に様々な分裂、不協和音を宿すことになったのは周知の通りです。

 このような「客観的なデータ」を見る限りにおいては、インカルチュレーションの効果が疑問に思われることもあります。

 弊会はインカルチュレーションというものに異を唱えているわけではありません。インカルチュレーションは教会の発展のために必要不可欠なものです。但し、変える必要の全くないものを無理やり変えようとする姿勢には疑問を感じます。又、変更後の新習慣が明らかに信徒を悪い方向に誘導するものであれば、改革が改悪になりかねないことを危惧してしまいます。

 アマゾン周辺における教会の存亡がかかっていますので、このシノドスは極めて重要なものです。シノドスの開催そのものを非難すべきではありません。このたびのシノドスは歴史の必然を伴って開催された教会の新たなる躍進の第一歩ともなるものです。

 多くの神学者、高位聖職者らがこのシノドスを不安視するようになったのは、準備資料が明らかになってからのことでした。

 準備資料には大小様々な爆弾が含まれていました。その中でも最も物議を醸したのがホスチアの質料(材料のこと)を現行の小麦から同地域で豊富に採取されるユカ(キャッサバ)に変更することの可否でした。

 専門家の意見を要約すれば、「もしユカへの変更が認められれば、キリストが制定した神法を犯すことになり、聖変化が発生せず、ユカを使用したミサは無効となる」とのことです。こうなれば、地上からミサを失くすことを目論む地獄の支配者の思う壺となります。

 弊会の賛同者の一人である濱田 了神父(フランシスコ会)は教会法の権威です。濱田神父は弊会の例会に出講された際に、一神教と多神教の違いについて次のように述べられました。

 「多神教の世界では豊作の神に農作物の豊かな実りを願い、山の神には嵐の終焉を願う。常に神を自分のコントロール下に置き、祭司は自分たちの都合の良い方向に物事が進展するように神に願う。一方、一神教は神に対する全面的な服従に特徴がある。カトリックは典型的な一神教である。歴史的にキリストの御体と御血に聖変化させるために必要な種無しパンや葡萄酒の入手が困難な地域や時期があったが、その状況下でも教会がルールを変えることはなかった。キリストの命令に背くことは許されないからである。日本でも葡萄酒に代えて日本酒、パンに代えてご飯を用いれば、江戸時代のミサはもっと簡単であったが、そのような試みは行われなかった」

 このたびのシノドスが神意に適う決議を生み出すことを真剣にお祈り致しましょう。