米大統領選の争点

2020年9月9日

 当会のスタンスとして政治的な問題に深く立ち入ることは致しません。カトリック教徒は各自の信念に基づいて支持政党を決める権利があり、教会は常に政治的問題には中立の立場でなければならないからです。

 しかし、教会が介入しなければならない例外的な政治的論争の一つに神の法を犯す諸問題があります。

 その代表的なものが妊娠中絶です。今回はアメリカの次期大統領選において従来同様、火花を散らすことが避けられないこの問題について考察するために、二つの記事を紹介します。

米民主党バイデン氏が一転、反中絶から公的資金での中絶支援支持に

 今年のアメリカ大統領選への出馬を表明した民主党のジョー・バイデン前副大統領はカトリック教徒として知られ、高潔な人格には定評があります。この人が突然、「個人的には中絶反対だが」と断りながらも、今までの姿勢を百八十度転換して(理由はともあれ)結果的には中絶容認主義者に変貌してしまったことは非常に悲しい出来事でした。(民主党の他の議員からの圧力に屈した形)

 バイデン氏の建前は「低所得者の女性を保護するため」ですが、裏を返せば中絶費用が医療保険から出ることを支持した格好となっています。

 今までのアメリカ社会は「ハイド修正条項」というものが効力を有しており、法によって定められた例外(妊娠が母体の生命を脅かす場合等)を除き、中絶費用は医療保険の対象外となっていました。

 今、民主党では「ハイド修正条項」の撤廃が大きな目標となっています。つまり、低所得者を保護するという美名のもとに、あらゆるケースでの中絶が医療保険で可能となる法改正に向けて挙党体制を敷いています。この風潮に逆らえば、大統領選の候補者になることは難しいのでしょう。

メディケイド(Medicaid)という低所得者向けの医療保険(日本における国民健康保険に相当)で簡単に中絶ができる社会になれば、今以上に中絶という名の殺人が増えることになります。

Trump says second term will ‘fight’ for unborn children in letter to pro-lifers

 一方、共和党のドナルド・トランプ大統領はカトリック教徒ではありませんが、中絶反対を強く訴えかけるプロライフ主義者です。

 上の英文記事のタイトルは「二期目は生まれる機会を奪われる子供(中絶された胎児)のための戦いになる」と早くから鮮明に生命尊重の態度を明示しました。

 日本では中絶は選挙の争点にもなりませんが、トランプ大統領はバイデン氏と民主党政策を徹底的に批判し、生々しい中絶の実態にまで言及しています。中絶に失敗した胎児が母親の体外に出た後に息が絶えるまで放置される医療現場の現実を持ち出し、「幼児抹殺だ」とまで言っています。

 中絶容認主義者の詭弁の一つに「胎児は生まれる前は人ではない」というものがありますが、この詭弁を木っ端微塵に打ち砕く狙いがこの発言には秘められているように思われます。

 トランプ大統領は「納税者に中絶費用の支払いを強制するとは忌々しい事態であり、投票箱で撃退しなければならない」とこれ以上にない説得力のある言葉で訴えかけています。

 国粋主義的なスタンス、移民への不寛容な政策など弱者に優しくないという批判に常にさらされるトランプ大統領ですが、倫理的には優れた一面も併せ持ちます。

 アメリカのカトリック教徒は投票に迷うことでしょう。

 人格者で同じ宗教のバイデン氏を支持するか、カトリックではなくても(中絶に関しては)カトリックの教義に忠実なトランプ大統領の再選を支持するか?

 アメリカの政治は全世界に絶大な影響力を及ぼします。社会が徐々に聖化され、神の許しを得たところでコロナ禍が終焉することを願い、聖母のご誕生を祝う本日、ロザリオの祈りを唱えることに致しましょう。